2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

紀野恵

不逢恋逢恋逢不逢恋ゆめゆめわれをゆめな忘れそ (あはぬこひあふこひあふてあはぬこひゆめゆめわれをゆめなわすれそ)

海藤抱壺

神様の楽書として自分を全うしよう

辰巳泰子

わがまへにどんぶり鉢の味噌汁をすする男を父と呼ぶなり

巌谷小波

春の雨居るかといへば居るといふ

石川啄木

人がみな 同じ方角に向いて行く。 それを横より見てゐる心。

岩谷山梔子

酒鬼の口の焔をさます清水かな

渡辺順三

凍るようなからつ風だ 烈風だ その中を 僕は歩いている。 ただ歩いている。

滝春一

おのが放屁気づかぬ母の日向ぼこ

佐佐木幸綱

言葉とは断念のためにあるものを月下の水のきらら否定詞

高柳重信

船焼き捨てし 船長は 泳ぐかな

大辻隆弘

青春はたとへば流れ解散のごときわびしさ杯をかかげて

下村非文

水洟や愛憎もなく人の世に

長塚節

小夜ふけてあいろもわかず悶ゆれば明日は疲れてまた眠るらむ

石橋秀野

短夜の看とり給ふも縁(えにし)かな

佐藤通雅

菜の花を花のまま焚く火照りかなうしろに暗い少年が居る

榎本冬一郎

日向ぼこよりすつぽりと老婆が抜け

岡本かの子

われよりも背丈のびたる男の子をばかい撫でて嘆く今日の別れに

菖蒲あや

女老ゆ風呂場の隅で足袋洗ひ

尾崎左永子

ひとりなる時蘇る羞恥ありみじかきわれの声ほとばしる

永田耕衣

夢の世に葱を作りて寂しさよ

浜田到

百粒の黒蟻をたたく雨を見ぬ暴力がまだうつくしかりし日に

目迫秩父

狂へるは世かはたわれか雪無限