2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧
今は昔し十八世紀の中頃英国に「ローレンス、スターン」といふ坊主住めり、最も坊主らしからざる人物にて、最も坊主らしからぬ小説を著はし、其小説の御蔭にて、百五十年後の今日に至るまで、文壇の一隅に余命を保ち、文学史の出る毎に一頁又は半頁の労力を…
高が一匹の鼠なり。而も穀作に害を与ふる鼠なり。今之をとらへて、君はわが同輩なりと云ふ。誰か其新奇なるに驚かざらん。去はれ生を天地の間に享くる者は、螻蟻(ろうぎ)の微と雖ども、皆有情の衆生なり。たとひ万物の霊なりとて、故なくして之を戕(そこな)…
人世に不平なれば、必ず之を厭ふ。世を厭ひて人間を辞職するものあり。小心硜硜(こうこう)の人これなり。世を厭ひて之を切り抜けるものあり。敢為(かんい)剛毅の人これなり。濁世と戦つて屈せざるものは、固より勇気なくては叶はぬ事。五十年の生命を抛(なげ…
文学上に出来する事件を極広く見積れば、人間界の事か、非人間界の事に外ならず。(是は仔細らしく文学に就て申す迄もなく、凡て吾人思想の及ぶものは、、皆此二者の内を出でざるは勿論ながら)偖(さて)非人間界にあつて、尤も吾々の注意を惹くものは、日月…
空言は実行に若かず“How beggarly appear arguments before a defiant deed!”家庭は大道に若かず一家に恋々たる者は田螺のわび住居を悦ぶが如く蝸牛の宅を負ふてのたり/\たるが如く牡蠣の口堅く鎖して生涯滄海を知らざるが如し。此世界は競争の世界なり安…
元来共和国の人民に何が尤も必要なる資格なりやと問はゞ独立の精神に外ならずと答ふるが適当なるべし。独立の精神なきときは平等の自由のと噪(さわ)ぎ立るも必竟机上の空論に流れて之を政治上に運用せん事覚束なく之を社会上に融通せん事益(ますます)難から…
然る処天茲(ここ)に一偉人を下し大に合衆聯邦の為に気焔を吐かんとにや此偉人に命じて雄大奔放の詩を作らしめ勢は高原を横行する「バッファロー」の如く声は洪濤(こうとう)を掠(かす)めて遠く大西洋の彼岸に達し説く所の平等主義は「シェレー」「バイロン」…
革命主義を政治上に実行せんと企てたるは仏人なり之(これ)を文学上に発揮したるは英人なり。
磐代(いはしろ)の浜松が枝(え)を引き結びま幸(さき)くあらばまたかへりみむ
家にあれば笥(け)に盛る飯(いひ)を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る
苦しくも降り来る雨か三輪の崎狭野の渡りに家もあらなくに
通りぬけ無用で通りぬけが知れ
駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮
本ぶりに成て出て行雨やどり (ほんぶりになつてでていくあまやどり)
黒髪の乱れも知らずうち臥せばまづかきやりし人ぞ恋しき
屁をひつてをかしくも無い一人者(ひとりもの)
来むと言ふも来ぬ時あるを来じと言ふを来むとは待たじ来じと言ふものを
月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして
御命講や顱のあをき新比丘尼 (おめいこうやあたまのあをきしんびくに)
御命講(おめいこ)や油のやうな酒五升
ながめつる今日は昔になりぬとも軒端(のきば)の梅はわれを忘るな
少年の犬走らすや夏の月
ここに消えかしこに結ぶ水のあわの憂き世にめぐる身にこそありけれ
冬はまた夏がましじやといひにけり
あかあかやあかあかあかやあかあかやあかあかあかやあかあかや月
御仏(みほとけ)や寝ておはしても花と銭
ふればかく憂さのみまさる世を知らで荒れたる庭につもる初雪
古郷(ふるさと)は蠅迄(まで)人をさしにけり
君なくてあしかりけりと思ふにもいとど難波(なには)の浦ぞ住みうき
春の夢気の違はぬが恨めしい