2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

西東三鬼

算術の少年しのび泣けり夏

韓愈「秋の懷の詩十一首(あきのおもひのしじふいっしゅ;秋懷詩十一首)」(抄) (原田憲雄)

今晨 起つことを成さず 端坐して日景を盡す 蟲鳴いて 室 幽幽 月吐いて 牕 冏冏 喪ひし懷は方に迷ふが若く 浮しき念は梗を含むより劇し 塵埃 伺候するに慵く 文字 浪に馳騁す 尚ほ須く其の頑を勉むべし 王事には朝請あり こんしん たつことをなさず たんざし…

「つきあかりのにわで サマータイム ソング」(アイリーン・ハース作・絵/わたなべしげお・訳)

「わたしの ものがたりは、ハッピーエンドで おわるのですか?」

栗木京子

観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生(かんらんしゃまはれよまはれおもひではきみにはひとひわれにはひとよ)

曹植「棄婦篇(きふへん)」(抄) (内田泉之助)

涙を收めて長歎息す、 何を以てか神靈に負かん。 招搖霜露を待つ、 何ぞ必ずしも春夏に成らん。 晩穫は良實と爲る、 願はくは君且く安寧なれ。 なみだををさめてちゃうたんそくす、 なにをもってかしんれいにそむかん。 せうえうさうろをまつ、 なんぞかなら…

秋元不死男

子を殴ちしながき一瞬天の蝉 (こをうちしながきいっしゅんてんのせみ)

王安石「湖陰先生の壁に書す(こいんせんせいのへきにしょす;書湖陰先生壁)」(抄) (今關天彭、辛島驍)

茆簷 長に掃って 靜にして苔無し 花木 畦を成して 手自ら栽う 一水 田を護り 緑を將って繞り 兩山 闥を排し 青を送り來る ばうえん つねにはらって しづかにしてこけなし くゎぼく けいをなして てみづからうう いっすゐ でんをまもり りょくをもってめぐり …

永田和宏

きみに逢う以前のぼくに遭いたくて海へのバスに揺られていたり

魚玄機「賣殘の牡丹(ばいざんのぼたん;賣殘牡丹)」(全) (辛島驍)

風に臨んで 興歎す 落花の頻なるを、 芳意 潛に消ゆ 又一春。 應に 價高きが爲に 人 問はざるなるべし、 却て 香甚だしきに縁って 蝶 親しみ難し。 紅英 只稱ふ 宮裏に生まるるに、 翠葉 那んぞ堪えん 路塵に染まるに。 根を 上林苑に移すに至るに及んで、 …

川崎展宏

炎天へ打つて出るべく茶漬飯

韓愈「秋の懷ひの詩十一首(あきのおもひのしじふいっしゅ;秋懷詩十一首)」(抄) (原田憲雄)

浮生 多塗なりと雖も 死に趨くは惟れ軌を一にす 胡すれぞ浪に自ら苦むや 酒を得ては且つ歡喜せよ ふせい たとなりといへども しにおもむくはこれきをいつにす なんすれぞみだりにみづからくるしむや さけをえてはかつくゎんぎせよ 浮生雖多塗 趨死惟一軌 胡…

王漁洋「樊圻の畫(はんきのぐゎ;樊圻畫)」(全) (橋本循)

蘆荻花なく秋水長し 淡雲微雨、瀟湘に似たり 雁聲搖落、孤舟遠し 何の處の青山が是れ岳陽 ろてきはななくしうすゐながし たんうんびう、せいしゃうににたり がんせいえうらく、こしうとほし いづれのところのせいざんがこれがくやう 蘆荻無花秋水長 淡雲微雨…

李白「子夜呉歌(しやごか)」(抄) (齋藤晌)

長安一片の月、 萬戸衣を擣つ聲。 秋風吹いて盡きず。 總て是れ玉關の情。 何れの日か胡虜を平げて、 良人 遠征を罷めん。 ちゃうあんいっぺんのつき、 ばんこころもをうつこゑ。 しうふうふいてつきず。 すべてこれぎょくくゎんのじゃう。 いづれのひかこり…

陸游「春雨(しゅんう)」(抄) (前野直彬)

狼藉たる殘花 地に滿ちて紅なり 衾を擁して 孤夢 雨聲の中 人生 十事 九は歎ずるに堪へたり 春色 三分 二は已に空し 但老盆の濁酒を傾くる有り 辭せず 衰鬢の青銅に對するを 長貧 博ち得たり 身の強健なるを 久しいかな 化工を咎むるに心無きこと らうぜきた…

文帝「短歌行(たんかかう)」(抄) (内田泉之助)

我獨り孤煢、此の百離を懷く。 憂心孔だ疚めども、我を能く知るもの莫し。 人も亦言ふ有り、憂は人をして老いしむと。 われひとりこけい、このひゃくりをいだく。 いうしんはなはだやめども、われをよくしるものなし。 ひともまたいふあり、うれひはひとをし…

蔡琰「悲憤の詩(ひふんのし;悲憤詩)」(抄) (内田泉之助)

人生幾何時ぞ、 憂を懷いて年歳を終へん。 じんせいいくばくときぞ、 うれひをいだいてねんさいををへん。 人生幾何時 懷憂終年歳 人の一生はどれだけもないのに、常に憂いをいだいて一生を終わらねばならぬとは、さてもはかないわが身である。

薛濤「巫山廟に謁す(ふざんべうにえっす;謁巫山廟)」(全) (辛島驍)

亂猿啼く處に 高唐を訪へば、 路は煙霞に入って 草木香し。 山色 未だ宋玉を忘るること能はず、 水聲 猶ほ是れ襄王を哭す。 朝朝 夜夜 陽臺の下、 雨と爲り 雲と爲って 楚國亡ぶ。 惆悵す 廟前 多少の柳、 春來 空しく畫眉の長きを 鬭はす。 らんゑんなくと…

蘇東坡「江城子(かうじゃうし)」(抄) (近藤光男)

十年 生死 兩ながら茫茫たり 思ひ量らざれど 自ら忘れ難し 千里の孤墳 淒涼を話するに處無し 縱使ひ相逢ふとも 應に識らざるべし 塵は面に滿ち 鬢は霜の如し じふねん せいし ふたつながらばうばうたり おもひはからざれど おのづからわすれがたし せんりの…

秦嘉「郡に留りて婦に贈る詩(ぐんにとどまりてふにおくるし;留郡贈婦詩)」(抄) (内田泉之助)

人生は朝露に譬ふ、 世に居れば屯蹇多し。 憂艱は常に早く至り、 歡會は常に苦だ晩し。 念ふ當に時役を奉じて、 爾を去ること日に遙遠なるべきを。 車を遣して子を迎へ還らしめんとせしに、 空しく往いて復た空しく返る。 書を省て情悽愴、 食に臨むも飯する…

屈原「九章 悲囘風(ひくゎいふう)」(『楚辭』より)(抄) (藤野岩友)

愁ひは鬱鬱として快よきこと無く、 居ひは戚戚として解く可からず。 心は鞿羈して開けず、 氣は繚轉して自ら締ぶ。 うれひはうつうつとしてこころよきことなく、 おもひはせきせきとしてとくべからず。 こころはききしてひらけず、 きはれうてんしてみづから…

白樂天「太行路(たいかうろ)」(全) (田中克己)

太行の路よく車を摧くも もし人の心に比すればこれ坦途。 巫峽の水よく舟を覆すも もし人の心に比すればこれ安流。 人の心の好惡はなはだ常ならず 好めば毛羽を生じ惡めば瘡を生ず。 君と結髮いまだ五載ならざるに たちまち牛女より參商となる。 古より稱す…

杜甫「岳陽樓に登る(がくやうろうにのぼる;登岳陽樓)」(全) (目加田誠)

昔 聞く 洞庭の水 今上る岳陽樓 呉楚 東南に圻け 乾坤 日夜浮ぶ 親朋 一字無く 老病 孤舟有り 戎馬 關山の北 軒に憑って涕泗流る むかし きく どうていのみづ いまのぼるがくやうろう ごそ とうなんにさけ けんこん にちやうかぶ しんぽう いちじなく らうび…

項羽「垓下の歌(がいかのうた;垓下歌)」(全) (内田泉之助)

力山を拔き、氣は世を蓋ふ。 時利あらず、騅逝かず。 騅の逝かざる、奈何す可き。 虞や虞や、若を奈何せん。 ちからやまをぬき、きはよをおほふ。 ときりあらず、すゐゆかず。 すゐのゆかざる、いかんすべき。 ぐやぐや、なんぢをいかんせん。 力拔山兮 氣蓋…

屈原「九章 抽思(ちうし)」(『楚辭』より)(抄) (藤野岩友)

心 鬱鬱として憂思し、 獨り永歎して傷みを増す。 思 蹇産として釋けず、 曼として夜の方に長きに遭ふ。 こころ うつうつとしていうしし、 ひとりえいたんしていたみをます。 おもひ けんさんとしてとけず、 まんとしてよのまさにながきにあふ。 心鬱鬱之憂…

白樂天「酒を勸む(さけをすすむ;勸酒)」(全) (田中克己)

君に一盃を勸む君辭するなかれ 君に兩盃を勸む君疑ふなかれ。 君に三盃を勸む君はじめて知らん 面上 今日は昨日よりも老い 心中 醉時は醒時に勝ることを。 天地 迢迢として自ら長久 白兎 赤烏 あひ趁ひて走る。 身後 金を堆くして北斗を挂ふるも しかず生前…

杜甫「玉華宮(ぎょくくゎきゅう)」(全) (目加田誠)

溪廻りて松風長し 蒼鼠 古瓦に竄る 知らず何王の殿ぞ 遺構 絶壁の下 陰房 鬼火青く 壞道 哀湍瀉ぐ 萬籟 眞の笙竽 秋色 正に瀟灑たり 美人も黄土と爲る 況や乃ち粉黛の假なるをや 當時 金輿に侍せしもの 故物 獨り石馬のみ 憂へ來って草を藉いて坐し 浩歌して…

「古諺古語(こげんこご)」(「『古詩源』 古逸」より)(抄) (内田泉之助)

將に飛ばんとする者は翼伏し、 將に奮はんとする者は足跼む。 將に噬まんとする者は爪縮み、 將に文らんとする者は且く樸なり。 まさにとばんとするものはよくふくし、 まさにふるはんとするものはあしかがむ。 まさにかまんとするものはつめちぢみ、 まさに…

屈原「九章 哀郢(あいえい)」(『楚辭』より)(抄) (藤野岩友)

心 怡しまざること長久にして、 憂ひと憂ひと其れ相接す。 こころたのしまざることちゃうきうにして、 うれひとうれひとそれあひせっす。 心不怡之長久兮 憂與憂其相接 わたくしの心の楽しまないことは、まことに久しく、憂いと憂いとが絶え間なく続く。 慘…

白樂天「香爐峯下、新に山居を卜し、草堂初めて成る。偶東壁に題す。(かうろほうか、あらたにさんきょをぼくし、さうだうはじめてなる。たまたまとうへきにだいす。;香爐峯下新卜山��

日高く睡足りなほ起くるに慵し 小閣 衾を重ねて寒を怕れず。 遺愛寺の鐘は枕を欹てて聽き 香爐峯の雪は簾を撥げて看る。 匡廬はすなはちこれ名を逃るるの地 司馬はすなはち老を送るの官たり。 心泰に身寧ければこれ歸處なり 故郷なんぞひとり長安にのみ在ら…

杜甫「古跡を詠懷す 五首(こせきをえいくゎいす ごしゅ;詠懷古跡 五首)」(抄) (目加田誠)

千秋を悵望して一たび涙を灑ぎ 蕭條として代を異にし時を同じうせず せんしうをちゃうばうしてひとたびなみだをそそぎ せうでうとしてよをことにしときをおなじうせず 悵望千秋一灑涙 蕭條異代不同時 私は千年昔を思いふかく眺めて覚えず涙を流し、その人と…