2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧
深更の便器に細く水流る市民の無辜をつひに信ぜず
ひとり膝を抱けば秋風また秋風
新しき明日(あす)の来(きた)るを信ずといふ 自分の言葉に 嘘はなけれど――
木葉髪(このはがみ)文芸長く欺きぬ
ゆゑもなく海が見たくて 海に来ぬ こころ傷みてたへがたき日に
鰯雲人に告ぐべきことならず
・糸瓜咲て痰のつまりし仏かな・痰一斗糸瓜の水も間にあはず・をとゝひのへちまの水も取らざりき
うちのおばあちゃん ねたきりやねン おこづかい くれへんし おはなし してくれへんし どこぞへ つれてもろうてへんし なんにも してくれへん と おもうてたけど だいじなこと してくれてはる いっしょうけんめい いきるということや うちのおばあちゃん うご…
吾木香(われもかう)すすきかるかや秋くさのさびしききはみ君におくらむ
人は何か一つくらい誇れるもの持っている 何でもいい、それを見つけなさい 勉強が駄目だったら、運動がある 両方駄目だったら、君には優しさがある 夢をもて、目的をもて、やれば出来る こんな言葉に騙されるな、何も無くていいんだ 人は生まれて、生きて、…
廃駅をくさあぢさゐの花占めてただ歳月はまぶしかりけり
電車の窓の外は 光りにみち 喜びにみち いきいきといきづいている この世ともうお別れかと思うと 見なれた景色が 急に新鮮に見えてきた この世が 人間も自然も 幸福にみちみちている だのに私は死なねばならぬ だのにこの世は実にしあわせそうだ それが私の…
こみあげる悲しみあれば屋上に幾度も海を確かめに行く
1 どうしたらいいの どうしたらいいの 問いかけるあなたの言葉が 私の中に谺(こだま)する 答のない私の中に―― どうしたらいいの どうしたら 私の中にあなたがいる ひっそりとひとりで立ちつくしている 心はもつれあった灰色の糸のかたまり だがその糸が私と…
しんしんと肺碧(あお)きまで海のたび
肺への転移を知ったとき、覚悟はしていたものの、私の背中は一瞬凍りました。その転移巣はひとつやふたつではないのです。レントゲン室を出るとき、私は決心していました。歩けるところまで歩いていこう。 その日の夕暮れ、アパートの駐車場に車を置きながら…
植えざれば耕さざれば生まざれば見つくすのみの命もつなり
だれもが悲しみを知っているという意味において、兄弟姉妹なのです。悲しみや苦しみをまったく知らない家庭から訪ねてくる人はいません。人が慰めに、あるいは手をさしのべに来てくれるのは、その人もまた、人生の悲しみや痛みを知っているからなのです。 苦…
さざなみの寄せては過ぐるまなざしよ 外国人つて君のことだよ
すなわち,有限的な数論をある分量だけ含むような任意の無矛盾な形式系において,決定不能な算術の命題が存在し,さらに,そのようなシステムの無矛盾性は,そのシステム内では証明できない,という事実を,厳密に証明できるのである.
あめつち に われ ひとり ゐて たつ ごとき この さびしさ を きみ は ほほゑむ
これによってあきらかなのは、人びとが、かれらすべてを威圧しておく共通の権力なしに、生活しているときには、かれらは戦争とよばれる状態にあり、そういう戦争は、各人の各人に対する戦争である、ということである。すなわち、戦争は、たんに戦闘あるいは…
支那蕎麦の立食(たちぐい)をした東京の去年の今頃楽しかつたね
逞しい情緒(即ちどんな抵抗でも克服しようとする力の意識を我々のうちに励起させるような情緒は、美学的崇高である。例えば激怒や、それどころか絶望(しかしめいった絶望ではなくて激越な絶望)すらこれに属する。これに反して懦弱な情緒(抵抗しようとする努…
たのしみはまれに魚烹て児等皆がうましうましといひて食ふ時 (たのしみはまれにうをにてこらみながうましうましといひてくふとき)
人間の自然的性質には、何か知ら不純なものがある。しかしこの不純とても、自由に由来する一切のものと同じく、結局はすぐれた目的を実現する素質を含んでいるに違いない。ところでその不純というのは、自分の本当の心意を押し隠して、世間から善良であり立…
世の中は空しきものと知る時しいよよますます悲しかりけり
順応派の生徒たちはといえば、彼らは「熟練を要する」職種に迎えられるのが常である。けれども、これといって独自な文化で防備するわけでもなく、気晴らしも知らず、状況解読の習慣化された能力にも乏しいまま平々凡々たる職場の日常に入るとき、経営側の目…
じゃんけんで負けて螢に生まれたの
庸徳をこれ行ない、庸言をこれ謹しみ、足らざる所あれば、敢えて勉めずんばあらず、余りあれば敢えて尽くさず。言は行を顧み、行は言を顧みる。君子胡(な)んぞ慥慥爾(ぞうぞうじ)たらざらん」と。 庸徳之行、庸言之謹、有所不足、不敢不勉、有余不敢尽、言顧…