2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

李商隱「夜雨に北に寄す」

君歸期(きき)を問ふに未だ期有らず、 巴山(はざん)の夜雨(やう)秋池(しうち)に漲る。 何(いつ)か當に共に西窓(せいさう)の燭を翦(き)って、 郤(かへ)って巴山の夜雨の時を話(かた)るべき。 (語釈) ◇北=北地の意であるが、巴山に対して、おそらく都の地を…

『伊勢物語』(第九段/東下り)

昔、男ありけり。その男、身をえうなきものに思ひなして、「京にはあらじ、東の方(かた)に住むべき国求めに。」とて行きけり。もとより友とする人、ひとりふたりして行きけり。道知れる人もなくて、惑ひ行きけり。三河の国、八橋(やつはし)といふ所に至りぬ…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

否! 否! 断じて否だ!

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

急いではだめだ!…… むちゃをやっちゃ!…… 乱暴にしては!…… われわれはそれを恐れていた…… 無理押しをしては、すべてがだめになる! 予想をすべて覆すのは、あわてることだ!…… もっとも実りの多い計画とは、ごくゆっくりと熟す計画である!…… われわれは早…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

だが、それにひきかえ、資本というやつは恐ろしく逃げ足が早い! 臆病だ! すごく内気でさえある!…… 人類のあらゆる不幸、とりわけ彼の不幸は常に資本の欠除からきている……動産への不信……恐ろしくまれな信用から!…… だが、そうしたことは全部解決可能だ!………

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

わたしはパンツをはきなおしていなかった……そうやって、糞の滝の真中に立っていた……

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

人々は不愉快な仕事を求めて、足早に部屋の中にはいっていく。もう眺めている人間なんかいない…… このわたしが思い出だ!…… そして腐敗した臭い……

『荀子』(性悪)

夫れ人は性質の美有りて、心(こころ)辨知(べんち)すと雖も、必ず將に賢師を求めて之れに事(つか)へ、良友を擇(えら)びて之れを友とせんとす。今(いま)不善人(ふぜんにん)と處(を)れば、則ち聞く所の者は欺誣詐僞(ぎふさぎ)なり。見る所の者は汙漫淫邪貪利(を…

『伊勢物語』(第一段/初冠)

昔、男、初冠して、平城(なら)の京、春日の里にしるよしして、狩りにいにけり。その里に、いとなまめいたる女はらから住みけり。この男、かいま見てけり。思ほえず、ふるさとに、いとはしたなくてありければ、心地惑ひにけり。男の、着たりける狩衣の裾を切…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

人を犯罪に駆り立てるのは、アルコールよりもむしろ空想物語である……

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

わたしは嬉しがる権利しかなかった! 讃歌を歌う権利しか! わたしは幸運の星のもとに生れているのだ! そのわたしが不運だなんて! わたしは献身的な両親をもっている、それでたくさんだ。そう、両親はあらゆる苦悩、悲劇的な宿命に身をささげている…… わた…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

わたしは、最後の努力を示すべき決定的な年齢に達していた……自分のチャンス、〈自分の運命〉をむりやりに試す…… 自己の生涯を方向づける二度とないときだった…… そいつはすばらしいことだ……すてきな……

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

言葉! 言葉! しゃべる? しゃべる? しゃべるってなにを?……

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

それに女ってやつは常に急いでいるってことを忘れちゃいけない。女ってやつはなんの上にでも生える…… 女はどんな汚いごみだっていいんだ…… 完全に花とおんなじだ…… 一番きれいなやつほど、一番臭いこやしが要るってわけだ! 花の季節は長くはつづきゃしない…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

わたしは引きずり込まれはしなかった…… くだらないおしゃべりなんてものはもう真平だった…… いろいろなことを思い出しただけで…… 家でのわいわい騒ぎ!…… 母のよまいごと!…… 言葉でさんざん人に言われる悪口! 糞っ! もうごめんだ! そんなものは山ほど知…

『孟子』(告子下)

宋牼(そうかう)將に楚に之かんとす。孟子石丘(せききう)に遇ふ。曰はく、先生將に何(いづ)くに之かんとするやと。曰はく、吾聞く、秦楚(しんそ)兵を構ふと。我將に楚王に見(まみ)え、説いて之れを罷めんとす。楚王悦ばざれば、我將に秦王に見え、説いて之れ…

『落窪物語』(巻一)

暗うなるままに、雨いとあやにくに、頭(かしら)さし出づべくもあらず。少将、帯刀(たちはき)に語らひたまふ。「くちをしう。かしこにはえ行くまじかめり。この雨よ」とのたまへば、「ほどなく、いとほしくぞはべらむかし。さはべれど、あやにくなる雨は、い…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

わたしの望みは出発することであり、それもできるだけ早く、そしてもう誰の話もきかないことだった。重要なのは自分がまちがってるか正しいか知ることではない。そんなのはまったくどうだっていいことだ…… 必要なのは、世の中の連中に自分にかまう気をなくさ…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

「人生ってことはおまえの年頃にとっちゃ、重大なことだよ……」

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

死だなんて! 畜生…… 自分の死!……

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

「ああ、きみ! それだけのことかね? もしわたしがきみみたいな胃を持ってたら! いいかね! そんなもの糞食らえだ!…… もちろんだ!…… 近親や縁故だなんて!…… 息子たちや従兄弟だなんて! 女房だなんて! 娘たちだなんて! 十八人の親父だなんて! ぼくが…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

わたしは仕事が大きらいだ。なんで選り好みをする?…… わたしは讃歌なんて歌やしない…… できることなら、やつらに糞をひっかけてやりたいくらいだ…… 雇われて働くってのはそういうことだ……

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

「おいおい、ちがうってば、坊や! 安心をし! そんなのはどうってことはない! 通してあげるよ! きみは人生をはじめるんだ! そんなにそうしたいんならね!」

『孟子』(離婁上)

曾子曾セキ(「セキ」は、上部「析」+下部「日」)を養ふに、必ず酒肉有り。將に徹せんとするや、必ず與(あた)ふる所を請ふ。餘り有りやと問へば、必ず有りといふ。曾セキ死す。曾元(そうげん)曾子を養ふに、必ず酒肉有り。將に徹せんとするや、與ふる所を請…

『竹取物語』

八月十五日ばかりの月にいでゐて、かぐや姫、いといたく泣きたまふ。人目も、今はつつみたまはず泣きたまふ。これを見て、親どもも、「何事ぞ。」と問ひ騒ぐ。かぐや姫、泣く泣く言ふ、「さきざきも申さむと思ひしかども、かならず心惑はしたまはむものぞと…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

わたしたちは一種恥じいっていた…… あたかも有罪であるかのように…… 悲しみをよりよく守るため、もう身動き一つしなかった…… わたしたちは母ともども、テーブルにじかにうつぶせて泣いた…… 腹も減らなかった…… もうなんにも欲しくなかった…… わたしたちはす…

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

もはや世界には、われわれの焼かれる火しかのこっていない……

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

母はわたしが生きていくためにあらゆることをした、たぶん生れてきたこと自体がまちがいだったのだ。

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

人間は束の間のものだ、たしかにそうだ、だがわれわれはもうたっぷり束の間のものでありすぎた。

セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

「ああ! 死をこさえながら死を楽しんでる、それが〈人間〉てもんだ」