2014-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ウラジーミル・ナボコフ『フィアルタの春』

「冗談だよ、冗談」慌ててぼくは大声で言いながら、横からニーナの右胸の下あたりまで手を回して軽く抱き寄せた。どこからともなく彼女の手にはぎっしりと花の詰まった束が現れた。無欲に香りを放つ、暗い色合いの小ぶりなスミレ(フィアルカ)だった。そして…

ウラジーミル・ナボコフ『フィアルタの春』

石段を登りきると、でこぼこの空き地に出た。ここからは優しい灰色の聖ゲオルギー山が見え、その脇のほうに動物の骨のように白い斑点がいくつも集まっているのがわかる(集落か何かだろう)。山裾を迂回して目に見えない列車の吐く煙だけが走って行き、突然…

ウラジーミル・ナボコフ『フィアルタの春』

テーブルには鮮やかな真紅の飲み物の入った大きなコップが載っていて、テーブルクロスに楕円形の照り返しを投げかけている。

アリストテレス『詩学』(今道友信 訳)

[悲劇とは]同情と恐怖を惹き起こすところの経過を介して、この種の一聯の行為における苦難(パトス)の浄化(カタルシス)を果たそうとするところのものである。