2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

苦しみは実存しない、なぜならそれは余計なものをなにひとつ持たないから。それ以外のすべてのものこそ、苦しみとの関係によって余計なものなのである。苦しみは〈在る〉。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

あなたはやってきた、しゃべった、帰った、すべて生憎の時に。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

遅すぎた。もうこの言葉には意味がなかった。そこには、握りしめていた、黄ばんだ紙の束以外のものはもはやなにひとつ存在しなかった。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

いま私は知ったのだ。事物はまったくそれがそう見えるものであり、――そしてその〈背後〉には……なにもないということを。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

〈経験〉は、たしかに死に対する砦以上のものだった。それはひとつの権利だった。老人たちの権利なのである。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

私が自分の人生について知っていることは、すべて書物から学んだように思われる。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

私はこう考えた、最も平凡な出来事がひとつの冒険となるには、それを〈語り〉はじめることが必要であり、それだけで充分である、と。これは人が騙されている事実である。人間はつねに物語の語り手であり、自分の物語と他人の物語に囲まれて生活している。彼…

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

なにかは終るためにはじまる。冒険はつぎ足されることがない。冒険はその死によってのみ意味を持つ。冒険の死に向って、それは恐らく自分の死でもあろうが、私は永久に引きずられて行く。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

そうだ、私は冒険というものを経験したことがない。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

私はもう仕事をする興味がない。夜を待つことの外に、もうなにもできない。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

人間には恐らく自分の顔を理解することが不可能なんだろうと思う。それともそれは私が孤独だからだろうか。社会生活を営む人たちは、友人たちに見られているのと同じ顔を、鏡の中に発見することを学んだのだ。私は友人を持っていない。私の肉体がこれほどむ…

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

午後三時。三時というのは、つねになにをしようと思っても遅すぎる、あるいは早すぎる時刻だ。午後の奇妙なひととき。今日は、特に耐え難い。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

人間が自分の理性を籠絡しておいていかに偽ることができるかに、私は感嘆する。

J-P・サルトル『嘔吐』(白井浩司 訳)

いちばんよいことは、その日その日の出来事を書き止めておくことだろう。はっきり見極めるために日記をつけること。取るに足りぬことのようでも、微妙な違いを、小さな事実を、見逃さないこと。そして特に分類してみること。どういう風に私が、この机を、通…

ミシェル・ウエルベック『素粒子』(野崎歓 訳)

人間は死を受け入れるようにはできていないのだ。自分の死であれ、他人の死であれ。

ミシェル・ウエルベック『素粒子』(野崎歓 訳)

「こんなことありえない……。こんなことありえない……。」その言葉に何か力でもあるかのように、幾度もそう繰り返すのだった。だが、ありえたのである。ありえないことなど何もない。

ミシェル・ウエルベック『素粒子』(野崎歓 訳)

「人生がこれほど限られたもので、可能性なんかたちまち消えてしまうだなんて、十七歳のころには想像もつかなかった。」

ミシェル・ウエルベック『素粒子』(野崎歓 訳)

子供たちは大人が自分たちのために作った世界に耐え、何とかそれに適応しようとする。そしてたいていの場合、またその世界を復元するのである。

ミシェル・ウエルベック『素粒子』(野崎歓 訳)

われわれの不幸は、幸福の可能性がいよいよ現実のものとなりつつあると思われたまさにそのとき極致に達するのである。

ミシェル・ウエルベック『素粒子』(野崎歓 訳)

生きることは、他人の眼差しがあって初めて可能になる。

ミシェル・ウエルベック『素粒子』(野崎歓 訳)

ブリュノは正しかった。父性愛とはフィクションであり、嘘であった。それが現実を変える力を持つ限りにおいて、嘘は便利なものだと彼は思った。だが変化に失敗したとき、後にはもはや嘘と、苦々しさと、虚偽の意識しか残らない。

ミシェル・ウエルベック『素粒子』(野崎歓 訳)

何と言っても、女の方が男より善良なのだ。女の方が優しく、愛情に満ち、思いやりがあって温和。暴力やエゴイズム、自己主張、残酷さに走る度合いが男よりは低い。そのうえより分別があり、頭がよく、働き者である。 結局のところ、とミシェルはカーテンに射…

ミシェル・ウエルベック『素粒子』(野崎歓 訳)

女たちというのはときとして、実に親切なものだ。攻撃性に対しては理解ある態度で、シニシズムに対しては優しさで応じる。いったいそんな風にふるまう男がいるだろうか?

ミシェル・ウエルベック『素粒子』(野崎歓 訳)

そしてまた、自転車で田園に出ていくこともよくある。全力でペダルをこぎ、両方の肺を永遠の味わいで満たす。子供時代の永遠は長く続かないが、しかしそのことを彼はまだ知らない。風景が流れていく。

ヘッセ『知と愛』(高橋健二 訳)

「苦しんだかって? うん、さんざん苦しんだ。でも、苦痛はまったくいいもんだ。苦痛はぼくを本心に立ちかえらせた」

ヘッセ『知と愛』(高橋健二 訳)

「――それゆえ、わたしは以前しばしば君に言った。思索家あるいは禁欲をまねないで、君自身となれ、自分を実現するようつとめよ! と」

ヘッセ『知と愛』(高橋健二 訳)

おそらくすべての芸術の根本は、そしてまたおそらくはすべての精神の根本は、死滅にたいする恐怖だ、と彼は考えた。われわれは死を恐れる。無常にたいして身ぶるいする。花がしぼみ、葉が落ちるのを、くり返し悲しくながめる。そして、自分たちもはかないも…

ヘッセ『知と愛』(高橋健二 訳)

「わたしが人間を知った範囲では、われわれは、特に若いときには、みなすこし、神意と自分の願望とを混同しがちである」

バルガス=リョサ『緑の家』(木村榮一 訳)

やはり、恋というのはこっそり忍び寄ってくるもんだ。初めのうちは、同情だと思っていたんだがな。

バルガス=リョサ『緑の家』(木村榮一 訳)

「何ごとによらず、内実は見かけほど単純じゃないから、よく事情を調べてみないと。人を批判する時は、よほど慎重にやらないといけないよ。」