2010-09-08から1日間の記事一覧

「二十歳の火影(ほかげ)」宮本輝

明かりが点(とも)ると、真っ赤な長襦袢(じゅばん)が目の前に立っていた。あっと声をあげそうになったが、それはハンガーで壁に吊るされているのである。そのままそっと父を座らせたとき、長襦袢が畳の上に落ち、一(ひと)呼吸ののち、部屋に沈んでいた女の匂…