2011-01-16から1日間の記事一覧

安岡章太郎「夕陽の河岸」

孤独とは、つまり年とって周囲に自分と同じ年頃の者が少くなり、話し相手もいなくなるといったことだろう。しかしもっと端的にいうと、それは自分自身が内面から痩せて稀薄になってくるのを自覚させられることではないか――。

安岡章太郎「朝の散歩」

なつかしいという情緒の底には、諦念ないしは断念がある。つまり、過ぎ去った時間や歳月は二度とかえってくることはない、そういうところから、なつかしさが生れる――。

安岡章太郎「虫の声」

そのN君によれば、紀伊半島というのは、人体にたとえていえば本州の下股、陸地や平地の恥部のような存在であって、有史以来、有間皇子、南朝朝廷、天誅組、それに大逆事件の紀州グループなど、数多くの謀叛人や皇位継承の敗者などがかくれ棲み、地理的にも突…