2011-11-21から1日間の記事一覧

太宰治「道化の華」

ああ、なぜ僕はすべてに断定をいそぐのだ。すべての思念にまとまりをつけなければ生きて行けない、そんなけちな根性をいったい誰から教わった?

太宰治「道化の華」

ああ、作家は、おのれのすがたをむき出しにしてはいけない。それは作家の敗北である。

太宰治「道化の華」

青年たちは、むきになっては、何も言えない。ことに本音を、笑いでごまかす。

太宰治「道化の華」

「いいじゃないか。えらい芸術家は、みんなどこか素人くさい。それでよいんだ。はじめ素人で、それから玄人になって、それからまた素人になる」

太宰治「道化の華」

青年たちはいつでも本気に議論をしない。お互いに相手の神経へふれまいふれまいと最大限の注意をしつつ、おのれの神経をも大切にかばっている。むだな侮りを受けたくないのである。しかも、ひとたび傷つけば、相手を殺すかおのれが死ぬるか、きっとそこまで…

太宰治「道化の華」

素直な心を持った人なら、そのわかいときには、おのれの身辺ちかくの誰かをきっと偶像に仕立てたがるものである

太宰治「葉」

死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目(しまめ)が織りこめられていた。これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った。