2015-03-17から1日間の記事一覧

福田甲子雄

靄あげて種蒔くを待つ大地かな

塚本邦雄

革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ

茨木のり子「自分の感受性くらい」

ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて 気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな しなやかさを失ったのはどちらなのか 苛立つのを 近親のせいにはするな なにもかも下手だったのはわたくし

前田河広一郎「三等船客」

「あれ、擽ったい。」 はねのけるような癇高な、鼻のひくい、中年期の女のみが発し得る声が、総体にゆらゆらと傾いた船室の一隅からひびいた。女の姿は何かの蔭になって見えなかったが、男は前のめりに動いた姿だけ、汚らしい壁の上に、不自然な暴動の影を投…