谷川俊太郎「只」

本に値段があるなんて
ピカソの絵が何百万だなんて
別れた女に慰藉料出すなんて
特許使用料だなんて
著作権使用料だなんて
詩を書いて稿料もらうなんて
なんてなんて未開な風習だろう!


空気も海も天の川も
愛も思想も歌も詩も
女も子供も友人も
ほんとうに大事なものはみんな
只!
        ……のはずなのに