ニーチェ『華やぐ知慧』

 最も優れた最も生産的な人間および民族の生活を吟味して、次のように自問してみなさい。誇らかに高く成長するよう期待されている樹木は、悪天候や嵐がなくてもそうなれるだろうか? 外部から来る不都合や障害、ある種の憎悪、嫉妬、我執、不信、冷酷、貪欲、凶暴などは、それなしでは美徳における偉大な成長そのものがほとんど不可能となるような、有利な条件なのではないだろうか? すなわち、弱い本性の持ち主なら破滅させてしまう毒も、強者にとっては強壮剤なのである――そしてまた、強者はそれを毒と呼ぶことすらしない。

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