ゲーテ「詩と真実」

どんなつまらない雑草でも花でも、懐しい日記の一片となり得るのである。それは、幸福な瞬間の思い出を呼び返すものは、一つとして無意義ではあり得ないからである。それゆえ、いろいろな時代のかたみである様々のものを無価値なものとして棄ててしまうことは、今もって私にはなかなかできないだろう。そういうものは、直接あの昔に私を帰らせてくれるからである。私はそうした昔のことを思い出すと悲しくなるのではあるが、やはり思い出すことはうれしいものである。