マキアヴェッリ『政略論』

 第一は、人間というものは新しいこととなるとなんにでも魅了されるもので、現在の状態に満足していない者はもちろんのこと、満足している者まで、変ったことを求める性向では同じだということである。
 この、変化を好む人間の気分が、それをもたらす者が外部の者ならば城門を開け放し、内部の者ならば、その人の周囲に群がってその人を押し立てる、という結果を生むのだ。
 その人物がなにをしようと、良し悪しは別にして、少なくとも変化ではあるのだから。
 第二は、人間というものは、敬愛か恐怖かのいずれかに突き動かされて、行動するものであるということである。
 だからこそ、敬愛の念であっても恐怖の気持であっても、人々を動かすということならば、同量の効果を生むのである。
 それどころか、人間とはしばしば、敬愛する者よりは恐怖を感ずる者のほうに、服従するものである。