ニーチェ『教育者としてのショーペンハウアー』

 特別な瞬間がある。それはいわば、その光のなかでは私たちがもう「わたし」という言葉を理解できない、このうえなく明るく愛に満ちた火花のような瞬間である。私たちの本性の彼岸には、そのような瞬間に此岸となる何かが存在する。そしてそれゆえにこそ私たちは、此岸と彼岸を結ぶ橋を心の底から渇望するのだ。