ロレンス・スターン『トリストラム・シャンディ』(朱牟田夏雄 訳)

――この地球という星は、悪意でなく良心にかけて申しますが、ほかの星のかすきれっぱしで出来ているのだと私は考える。――もちろんこの地球にしたところで、そこに生まれた者が、生まれながらに立派な爵位とかたいへんな財産とかを持っているのなら、あるいは、何とか工夫して高位高官、顕職、権力の座にのぼる余地があるというのなら、まんざらでもないでしょう。――が私の場合はそうは行かない。――したがって、誰にしても市(いち)のよしあしは自分の店の売り上げの高できめる道理で――重ねて断言いたしますが、私はこの地球を天下最も下劣な世界の一つと考える。

   ※太字は出典では傍点