ジョン・ロック『人間知性論』(大槻春彦 訳)

航海する者が自分のもつなわの長さを知ることは、それで大洋の深さをすべて測れなくとも、たいへん役に立つ。航海を導いて、難破の恐れのある浅瀬に乗り上げないよう用心させる必要のある場所で、じゅうぶん底へとどく長さがあると知っていれば、よいのである。この世での私たちの務めは、なんでも知り尽すことでなく、私たちの行為にかかわりあるものを知ることである。