ジェームズ・ワトソン『二重らせん』(江上不二夫・中村桂子 訳)

冷え切った、ほとんど暖房のきいていない汽車の客室で、私はB型の模様について覚えていることを新聞のすみの余白に書きとめた。それからケンブリッジへ向かってガタガタと走る汽車の振動に身をまかせながら、二本鎖と三本鎖のどちらが正しいか考えてみた。……自転車でカレッジへ帰り、裏門をのり越えるころには、私の腹は決まっていた。二本鎖で模型を組み立ててみよう。フランシスも賛成してくれるにちがいない。

   *B型の模様 二重らせん構造を証拠だてるDNAのX線回析像。