世阿弥『風姿花伝』

秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず、となり。この分け目を知る事、肝要の花なり。そも/\、一切の事(じ)、諸道芸において、その家々に秘事と申すは、秘するによりて大用あるが故なり。しかれば、秘事といふことを顕はせば、させる事にてもなきものなり。これをさせる事にてもなしと云ふ人は、未だ、秘事と云ふ事の大用を知らぬが故なり。