竹内好『日本と中国のあいだ』(「屈辱の事件」)

日本の天皇制やファシズムについて、社会科学者の分析があるが、私たちの内部に骨がらみになっている天皇制の重みを、苦痛の実感で取り出すことに、私たちはまだまだマジメでない。ドレイの血を一滴、一滴しぼり出して、ある朝、気がついてみたら、自分が自由な人間になっていた、というような方向での努力が足りない。それが八・一五の意味を、歴史のなかで定着させることをさまたげているように思う。