辻善之助『田沼時代』

政治家は手腕ばかり如何に勝ぐれても、徳望がなくてはだめである。田沼は、名詮自称で濁ったる泥池であった。しかしながら、その中には蓮の花も咲いた。同時にまた根もあり、また実も結び得たのである。しかれども泥田はやはり泥田であった。