ヴァーツラフ・ハヴェル『ハヴェル自伝 抵抗の半生』(佐々木和子 訳)

たしかに、ある意味では、知識人とは、もともといつでも、戦う前からすでに敗北しているもの、いわば、永遠なる敗北を宣告されたシジフォスのごときものであり、勝利している知識人なんぞというものがうさんくさいのです。ところがまた一方では、べつの、もっと深い意味において、知識人は、自己のあらゆる敗北にもかかわらず敗北しないでいる――シジフォスのように――とも思います。まさに自己の敗北によって勝利するのです。