長谷川時雨『旧聞日本橋』

夏の下町の風情は大川から、夕風が上潮(あげしお)と一緒に押上げてくる。洗髪、素足、盆提灯、涼台、桜湯――お邸方や大店(おおだな)の歴々には味えない町つづきの、星空の下での懇親会だ。湯屋より、もちっとのびのびした自由の天地だ。