田山花袋「露骨なる描写」

 あるいは言うかも知れん、露骨なる描写が何故に技巧と相伴うことが出来ぬと。その意は、露骨なる描写は技巧と相待っていよいよその妙を極めはせぬかというのである。けれど自分は信ずる、露骨なる描写を敢てすれば、敢てするほど、いわゆる文章、いわゆる技巧とはいよいよ相乖離して行くものであろうと。何故かと言うに、事いよいよ俗なれば文いよいよ俗、相いよいよ露骨なれば文いよいよ露骨なるはこれ自然の勢であるから。