G・K・チェスタトン「狂った形」(中村保男 訳)

「現代人の頭は、いつでも、二つの異った考えを混同している――つまり、ふしぎなるものという意味での神秘と、複雑なるものという意味での神秘とをいっしょくたにしているのだな。そこに、現代人が奇蹟を信じえぬ理由の半分がある。奇蹟は驚くべきものではあるが、単純だ。奇蹟なるがゆえに単純なのさ。奇蹟は、自然や人間の意志を通じて間接的にやってくるかわりに、神(もしくは悪魔)から直接にやってくる力なのだ」