鎌田慧『自動車絶望工場』

 身体の強い者、意志の強い者、抵抗力の強い者、腕の良い者だけが残る。いや、そうではなくて、辞めて行く者が当り前なのであり、そっちの方が人間らしく、残る者の方が正常でないのかもしれない。人間としての誇り高い者、ロボット化されるのに耐えられない者、いままでの自分のすべてを捨てさせられ、ただ決められた手順、リズム、スピードだけに馴らされ、考えることも中止させられてしまうことを、人間的な堕落だと感じた者がさっさと辞めて行くのではないだろうか。