ミシェル・フーコー『性の歴史I 知への意志』(渡辺守章 訳)

十八世紀における権力の技術にとって大きな新しい様相の一つは、経済的・政治的問題としての「人口」の問題であった。富としての人口であり、労働力あるいは労働能力としての人口であり、それ自体の増大と資源としてのその可能性との間の均衡関係において把えた人口である。政府は気が付いたのだ、相手は、単に臣下でも「民衆」ですらもなく、「人口」という形で捉えられた住民であって、そこにはそれ固有の特殊な現象と、固有の変数があると。出生率、罹病率、寿命、妊娠率、健康状態、病気の頻度、食事や住居の形がそれだ。すべてこれらの変数は、生に固有の運動と制度に特有の作用との交叉点に位置する。(中略)このような人口をめぐる経済的・政治的問題の核心に、性があった。