レイ・ブラッドベリ『何かが道をやってくる』(大久保康雄 訳)

「町じゅうで一番幸福そうで、一番にこやかな微笑の持主が、ときには一番重い罪の荷を背負っている場合もあるのだよ。微笑にもさまざまある――その明暗のちがいを見分けることが大切なんだ。アザラシみたいに吠えたり、豪傑笑いをする男は、自分を隠すために、そうしている場合が多いものだ。冗談をいい、笑い飛ばして、罪の意識をまぎらせているわけだ。しかも、人間というやつは、罪を愛している面もある。多種多様な形、大きさ、色合い、匂いの罪を、じつに烈しく愛しているのだよ」