中野正貴『東京窓景 TOKYO WINDOWS』

 日頃我々は一日の大半を部屋という囲われた空間の中で過ごし、都市の風景を内側から見つめている。それは自宅の窓からであったり、移動中の車や電車の窓からであったり、職場の窓からだったりする。
 風景を映画館のスクリーンやハイヴィジョンテレビの大画面を観るのと同様に、フレーム(額)付きの映像として知覚しているはずなのだが、意識に残った風景の中にフレームは存在しない。
 人間の目は全く利巧に出来ていて、必要な情報以外は自動消去装置が勝手に作動し不純物をカットするよう常時設定されている。確かに視角内に存在していた筈のアルミサッシやクロスワイヤー入りガラス窓等、居住空間の狭い東京の小さな窓には必ず登場するアイテムも見あたらない。
 そこで、意識の中にフレームを戻してみた。