夏目漱石「元日」

 元日を御目出たいものと極(き)めたのは、一体何処の誰か知らないが、世間が夫(そ)れに雷同してゐるうちは新聞社が困る丈(だけ)である。雑録でも短篇でも小品でも乃至(ないし)は俳句漢詩和歌でも、苟(いやし)くも元日の紙上にあらはれる以上は、いくら元日らしい顔をしたつて、元日の作でないに極(きま)つてゐる。