李白「靜夜思(せいやし)」(全) (齋藤晌)

牀前 月光を看る。
疑ふらくは是れ地上の霜ならんかと。
頭を擧げて山月を望み、
頭を低れて故郷を思ふ。


しゃうぜん げっくゎうをみる。
うたがふらくはこれちじゃうのしもならんかと。
かうべをあげてさんげつをのぞみ、
かうべをたれてこきゃうをおもふ。


牀前看月光
疑是地上霜
擧頭望山月
低頭思故郷


 寝臺の前が明るく白く輝いているのを見た。おや、地上に霜がおりていると思った。しかし、頭をもたげて空をあおぐと、山のうえにかかった月を見た。ああ、月だったのか、とまたうなだれて、故郷のことを思いつづけている自分だった。