薛濤「僧の蘆管を吹くを聽く(そうのろくゎんをふくをきく;聽僧吹蘆管)」(全) (辛島驍)

暁蝉嗚咽し 暮鶯愁ふ。
言語 殷勤 十指頭。
梵書を閲むを罷めて 聊か一弄すれば、
散じて 金磬に隨って 清秋に泥む。


げうぜんをえつし ぼあううれふ。
げんご いんぎん じっしとう。
ぼんしょをよむをやめて いささかいちろうすれば、
さんじて きんけいにしたがって せいしうになづむ。


暁蝉嗚咽暮鶯愁
言語殷勤十指頭
罷閲梵書聊一弄
散隨金磬泥清秋


  僧の蘆笛(ろてき)を吹くをききて
咽(むせ)びなくなる暁(あけ)の蝉 暮の鶯
あはれそは十の指(および)のなすわざか
經よみやめてたはむれに吹く笛のねよ
澄みわたる秋けはひをながるるは (那珂秀穂氏譯)