岑參(しんしん)「韋員外の家の花樹の歌(ゐゐんぐゎいのいへのくゎじゅのうた;韋員外家花樹歌)」(抄) (齋藤响)

今年の花は去年に似て好し。
去年の人は今年に到りて老ゆ。
始めて知る、人老いて花に如かざるを。
惜しむ可し落花 君掃ふこと莫れ。


こんねんのはなはきょねんににてよし。
きょねんのひとはこんねんにいたりておゆ。
はじめてしる、ひとおいてはなにしかざるを。
をしむべしらくくゎ きみはらふことなかれ。


今年花似去年好
去年人到今年老
始知人老不如花
可惜落花君莫掃


今年の花も去年の花とすこしもかわらずに美しい。しかし人間は、そうはいかない。去年の人間は今年になると一つ年をとっている。そこで、わかることは、人間は年をとるから、毎年かわりのない花にはおよばないということだ。そうだとわかったら、散ってゆく花も惜しい。どうぞ、君よ、掃き棄てないでくれたまえ。