曹植「棄婦篇(きふへん)」(抄) (内田泉之助)

涙を收めて長歎息す、
何を以てか神靈に負かん。
招搖霜露を待つ、
何ぞ必ずしも春夏に成らん。
晩穫は良實と爲る、
願はくは君且く安寧なれ。


なみだををさめてちゃうたんそくす、
なにをもってかしんれいにそむかん。
せうえうさうろをまつ、
なんぞかならずしもしゅんかにならん。
ばんくゎくはりゃうじつとなる、
ねがはくはきみしばらくあんねいなれ。


收涙長歎息
何以負神靈
招搖待霜露
何必春夏成
晩穫爲良實
願君且安寧


涙をおさめて長いため息をもらしつつ思う。神のみ心にどうしてわたしがそむけましょうぞ。あの招搖(しょうよう)の星も、霜露の秋を待つものを、何も春や夏に急いで実を結ばねばならぬことはない。収穫はおそいほどよい実がなるというもの、あなたもどうかあせらずに、しばらく心をおちつけていただきたい。