薛濤「月(つき)」(全) (辛島驍)

魄は 鉤樣に依って 小さく
扇は 漢機を逐うて 團し。
細影 將に圓ならんとするの質、
人間 幾處に 看る。


はくは こうやうによって ちいさく
せんは かんきをおうて まるし。
さいえい まさにゑんならんとするのしつ、
にんげん いくしょに みる。


魄依鉤樣小
扇逐漢機團
細影將圓質
人間幾處看


 簾をまきあげてかける鉤(かぎ)のような形――鎌のように小さな月は、月の精のようなもの。漢の女が織りなす機(はた)から生まれた布を張った圓形の扇(うちわ)のようなまんまるな月。細い月の姿もやがてはまんまるになってゆくもとである。人間社會では、このような月をいたるところでさまざまな思いをこめて仰いでいるのである。

   ※太字は出典では傍点