シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』(田辺保 訳)

人は、自分の方も〈読んで〉いるが、他人からも〈読まれて〉いる。読みと読みとが衝突しあう。だれかある人に対して、自分がおまえを〈読む〉とおりにおまえもおまえ自身を〈読み〉とるようにせよと強いること(奴隷にすること)。他の人々に対して、自分が自分を〈読んで〉いるとおりに、自分を〈読んで〉くれるように強いること(征服)。機械的な作用。多くの場合、耳の聞こえぬ者同士の対話。

   ※太字は出典では傍点