イーヴ・ボンヌフォア「苦悩と欲求との対話」(抄)(安藤元雄 訳)

・そのときわたしは驚くのだ これほど時間と苦痛とが
 必要だったのかと。なぜなら果実が
 すでに樹の中にみなぎっていたから。太陽が
 すでに夕方の国をいろどっていたから。


・そして おまえ
 そしてそれこそがわたしの自慢なのだ
 おお 光を背にすること少なく 愛されること多く
 わたしにももはや他人でない者よ。知っているとも われ
  われは
 同じ暗い庭で育ったのだ。われわれは
 樹々の下でおなじ飲みにくい水を飲んだのだ。
 同じいかめしい天使がおまえをおびやかした。
 そしてわれわれの歩みも同じだ 忘れてもいい子供のころ
  の
 苦労だの 同じけがれた呪いだのを
 あとにして行く。