2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

陸游「釵頭鳳(さいとうほう)」(抄) (前野直彬)

・錯(あやま)てり 錯てり 錯てり 錯錯錯 思いかえせば何もかも、誤っていた、誤っていた。 ・莫(なか)れ 莫れ 莫れ 莫莫莫 されば昔の思い出に、沈むな、沈むな。

竹下文子「野のピアノ」

――たとえ、あなたが音楽を忘れても、音楽はあなたを忘れはしないのよ。

宮沢賢治「雪わたり」

「かた雪かんこ、しみ雪しんこ」

「柏舟(はくしう)」(「『詩經』 國風 邶風(はいふう)」より) (抄) (高田眞治)

我が心石に匪ず 轉ずべからざるなり 我が心席に匪ず 卷くべからざるなり 威儀棣棣として 選ふべからざるなり わがこころいしにあらず てんずべからざるなり わがこころむしろにあらず まくべからざるなり いぎていていとして かぞふべからざるなり 我心匪石 …

竹下文子「野のピアノ」

――あなたはベートーベン? あなたはショパン? ちがう、ちがう。あなたは、ほかのだれでもない。あなたは、あなたの曲をひけばいい。

宮沢賢治「雪わたり」

キック、キック、トントン。キック、キック、トントン。キック、キック、キック、キック、トントントン。

蘇東坡「子由の『澠池に舊を懷ふ』に和す(しいうの『べんちにきうをおもふ』にわす;和子由澠池懷舊)」(抄) (近藤光男)

人生 到る處 知んぬ何にか似たる 應に 飛鴻の雪泥を踏むに 似たるべし 泥上 偶然 指爪を留む 鴻 飛んで 那ぞ復た 東西を計らん じんせい いたるところ しんぬなんにかにたる まさに ひこうのせつでいをふむに にたるべし でいじゃう ぐうぜん しさうをとどむ…

竹下文子「野のピアノ」

魔法にかけられたふしぎな場所というのは、ほんとうは、どこにでもあるものなのです。山にも、森にも、海岸にも……いいえ、大通りの交差点のまん中や、デパートの食料品売り場にさえ、用心深く隠されているのです。 ふつうの人たちは、そこがふしぎな場所だと…

ヴィクトル・ユーゴー『レ・ミゼラブル』(豊島与志雄 訳)

「昔私は生きるために、一片のパンを盗みました。そして今日私は、生きるために一つの名前を盗みたくはありません。」

林逋(りんぽ)「山園の小梅(さんゑんのせうばい;山園小梅)」(全) (今關天彭、辛島驍)

衆芳搖落して 獨り暄妍 風情を占め盡して 小園に向ふ 疎影横斜 水清淺 暗香浮動 月黄昏 霜禽下りんと欲して 先づ眼を偸み 粉蝶如し知らば 合に魂を斷つべし 幸に 微吟の相狎る可き有り 須ひず 檀板と金尊と しゅうはうえうらくして ひとりけんけん ふうじゃ…

杉みき子「わらぐつのなかの神さま」

「おれは、わらぐつをこさえたことはないけども、おれだってしょく人だから、しごとのよしあしはわかるつもりだ。いいしごとってのは、見かけできまるもんじゃない。つかう人の身になって、つかいやすく、じょうぶで長もちするようにつくるのが、ほんとのい…

高橋和巳『悲の器』

さようなら、米山みきよ、栗谷清子よ。さようなら、優しき生者たちよ。私はしょせん、あなたがたとは無縁な存在であった。

高青邱「將進酒(しゃうしんしゅ)」(抄) (蒲池歡一)

地下應に酒壚の處なかるべし、 何を苦しんで、寂寞、平生に孤むくや。 一杯一曲、 我れ歌はん君續け。 明月自ら來つて、 燭を秉るを須ゐず。 五岳既でに遠く、 三山亦た空し。 神仙を求めんと欲すれば、 杯酒の中に在り。 ちかまさにしゅろのところなかるべ…

杉みき子「加代の四季」

加代は、ふしぎでたまらない。 あんなに、つもってはきえ、つもってはきえしているのに、どうして、いつのまに、ふんでもとけないあつい雪の道ができあがるんだろう。 土にとりついて、とけないで、上からおちてくるなかまをささえた、そのさいしょのひとつ…

三島由紀夫『奔馬 豊饒の海(二)』

『何もかも言うがよい。何もかも正直に言って、そして思うさま傷つくがいい。お前もそろそろ身を守る術(すべ)を知るべき年齢だ。何もかも言うことによって、最後にお前は、《真実が誰によっても信じてもらえない》という、人生にとってもっとも大切な教訓を…

陶潛「停雲 四章(ていうん ししゃう)」(抄) (星川清孝)

良朋幽邈たり、首を搔いて延佇す。 りゃうほういうばくたり、かうべをかいてえんちょす。 良朋幽邈 搔首延佇 共に酒を汲みたい良友は遥かに遠くて消息もわからない。私はやるせなく頭髪を搔きながらたたずむのである。