2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

王漁洋「夜雨のとき寒山寺に題し、西樵・禮吉に寄する二首(やうのときかんざんじにだいし、せいせう・れいきつによするにしゅ;夜雨題寒山寺寄西樵禮吉二首)」(抄) (橋本循)

日暮れて東塘正に落潮 孤篷泊する處、雨瀟瀟 疎鐘夜火、寒山寺 呉楓の第幾橋をかを過ぎしを記す ひくれてとうたうまさにらくてう こほうはくするところ、あめせうせう そしょうやくゎ、かんざんじ ごふうのだいいくけうをかをすぎしをきす 日暮東塘正落潮 孤…

長崎源之助「おじいさんのかぼちゃ」

「とかいも、わるくないな」 と、おじいさんは、このごろ、いうようになりました。 「子どものいるところって、いいな」 ですって。

フローベール『感情教育』 (生島遼一 訳)

そして二人は自分たちの一生のあらましをふりかえってみた。 二人とも失敗だった。恋愛を夢みた男も、政権を夢みた男も。どういうわけだろう? 「たぶん、生(き)一本にやらなかったからだ」フレデリックはいった。 「きみの場合はそうかもしれん。しかしぼく…

陸游「太息(たいそく)」(抄) (前野直彬)

太息し重ねて太息す 吾が生 誰と與にか歸せん 那んぞ知らん 暮景の迫れるを 但覺ゆ 故人の稀なるを 禍ひを避けて歸るも猶困しみ 讒を憂へて默するも亦非なり たいそくしかさねてたいそくす わがせい たれとともにかきせん いかんぞしらん ぼけいのせまれるを…

吉橋通夫「筆」

人をうらんでいるひまはない。うでをみがくことが先だ。

モーム『人間の絆』 (中野好夫 訳)

「どうも君は、自分の不幸について、少し過敏すぎるのじゃないかな。そのことで、神様に感謝する、というような気が、起ったことはないかね?」 (中略) 「なんというか、反抗的に、それを考えている限りはね、それは、ただ屈辱を感じるばかりだ。だがな、…

高青邱「胡隱君を訪ぬ(こいんくんをたづぬ;尋胡隱君)」(全) (蒲池歡一)

水を渡り、復た水を渡り、 花を看、還た花を看る。 春風江上の路、 覺えず君が家に到る。 みづをわたり、またみづをわたり、 はなをみ、またはなをみる。 しゅんぷうかうじゃうのみち、 おぼえずきみがいへにいたる。 渡水復渡水 看花還看花 春風江上路 不覺…

吉橋通夫「筆」

「きょう力があるものが、あしたも強いとはかぎらんのじゃ。ほんとうに強いのは、毎日のくらしをまもって生きてる町人や百姓じゃ。そやから、あきらめたらあかん。またこの町内へもどるという気持ちをもちつづけてたら、いつかその機会がある」

ジョーゼフ・ヘラー『キャッチ=22』(飛田茂雄 訳)

なんといやらしい世の中だろう。彼はこの同じ晩に、繁栄を誇る自分の祖国においてさえ、どれだけの人々が窮乏に苦しんでいるだろう、どれだけの人々が掘っ立て小屋に住んでいるだろう、どれだけの夫が酔っぱらい、どれだけの妻がぶん殴られ、どれだけの子供…

王安石「北山(ほくざん)」(全) (今關天彭、辛島驍)

北山 緑を輸って 横陂に漲る 直も 囘塘を塹って 灎灎の時 細かに落花を數ふるは 坐すること久しきに因る 緩かに芳草を尋ぬれば 歸ること遲きを得たり ほくざん みどりをおくって わうひにみなぎる あたかも くゎいたうをほって えんえんのとき こまやかにら…

吉橋通夫「筆」

せまい。 建っていた家がなくなり、こうしてあき地になってしまうと、胸が痛くなるほどせまい。五、六歩あるくだけで、となりの家にぶつかってしまう。ほんとうにこんなところで、毎日、ねておき、食べ、走りまわり、どなられ、うらみ、ないていたのだろうか…

トーマス・マン『魔の山』(関泰祐・望月市恵 訳)

「この世に政治でないものなどは存在しません。すべてが政治です」

韓愈「早春雪中に鸎を聞く(さうしゅんせっちゅうにうぐひすをきく;早春雪中聞鸎)」(抄) (原田憲雄)

寄謝す 幽棲の友 辛勤するは身の爲ならず きしゃす いうせいのとも しんきんするはみのためならず 寄謝幽棲友 辛勤不爲身 ひっそりと清らに住む友よ きみだからいうのだけれど つらい勤めにはげむのも身のためばかりじゃないのだよ

吉橋通夫「さんちき」

「そのとおりや。車大工(くるまだいく)は木をけずりながら自分の命をけずってるんや」

ラクロ『危険な関係』(伊吹武彦 訳)

これで私の不幸は完全なものとなりました。私はありとあらゆる不幸を味わいに生まれて来たような気がいたします。

蘇東坡「石蒼舒 醉墨堂(せきさうじょ すゐぼくだう)」(抄) (近藤光男)

人生 字を識(し)りて 憂患始まる 人生 識字 憂患始 人間、文字を覚えたらさいご、その日から人生のわずらわしさが始まる。

斎藤隆介「モチモチの木」

「自分で自分を弱虫だなんておもうな。人間、やさしささえあれば、やらなきゃならねえことは、きっとやるもんだ。それを見て、他人がびっくらするわけよ。は、は、は」

ヘミングウェイ『誰がために鐘は鳴る』(大久保康雄 訳)

そのまま、ふたりは一つになり、いまはもう見えないが、時計の針の進むにつれて、ふたりは知ったのだ。もう何ごとも自分に起らないことは相手にもけっして起るはずはない。これ以上のことはありえない。これが、すべてなんだ。いつまでもこうしているんだ。…

白樂天「松齋に自ら題す(しょうさいにみづからだいす;松齋自題)」(抄) (田中克己)

形骸 順動に委ね、 方寸 空虚に付す。 これを持してもって日を過せば 自然にして晏如多し。 昏昏また默默、 智にあらずまた愚にあらず。 けいがい じゅんどうにゆだね、 はうすん くうきょにふす。 これをぢしてもってひをすごせば しぜんにしてあんじょおお…

今西祐行「一つの花」

「この子は、一生、みんなちょうだい。山ほどちょうだいといって、りょう手をだすことを、しらずにすごすかもしれないね。一つだけのいも、一つだけのにぎりめし、一つだけのかぼちゃのにつけ……。みんな、一つだけ。一つだけのよろこびさ。いや、よろこびな…

ドストエフスキー『罪と罰』(工藤精一郎 訳)

人間がもっともおそれているのは何だろう? 彼らがもっともおそれているのは、新しい一歩、新しい自分の言葉だ。だからおれはしゃべるだけで、何もしないのだ。いや、もしかしたら、何もしないから、しゃべってばかりいるのかもしれぬ。

駱賓王(らくひんわう)「帝京篇(ていけいへん)」(抄) (齋藤晌)

相顧るに百齡皆待つ有り。 居然として萬化咸く應に改まるべし。 あひかへりみるにひゃくれいみなまつあり。 きょぜんとしてばんくゎことごとくまさにあらたまるべし。 相顧百齡皆有待 居然萬化咸應改 よく考えてみると、人生百歳といっても百歳になるものは…

松谷みよ子「赤神(あかがみ)と黒神(くろがみ)」

金のしずく ふれふれ まわりに 銀のしずく ふれふれ まわりに

ドストエフスキー『未成年』(米川正夫 訳)

「ある人は本を読んでも、ただ自分の気に入った言葉の花ばかり抜き出して、喜んでおる。そういう人間は、必ず空な心配にあくせくして、しっかりした判断というものがない」

李賀「金銅仙人 漢を辭する歌(きんどうせんにん かんをじするうた;金銅仙人辭漢歌)」(抄) (齋藤响)

天若し情有らば 天も亦老いん。 てんもしじゃうあらば てんもまたおいん。 天若有情天亦老 天にもし情というものがあったら、天もまた老いさらぼえることだろう。

立原えりか「木馬がのった白い船」

局長さんは、はじめて、おとなって、さびしいものかもしれないぞ、と思いました。すこし、かなしくなりました。

ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』(豊島与志雄 訳)

クリストフは倒れかかりながらも、ついに向こう岸に着く。そして彼は小児に言う。 「さあ着いたぞ! お前は実に重かった。子供よ、いったいお前は何者だ?」 すると小児は言う。 「私は生まれかかってる一日です。」 ※太字は出典では傍点

王漁洋「江上(かうじゃう)」(全) (橋本循)

呉頭楚尾、路如何 煙雨秋は深くして白波暗し 晩に寒潮を趁うて江を渡って去けば 滿林の黄葉、雁聲多し ごとうそび、みちいかん えんうあきはふかくしてはくはくらし ばんにかんてうをおうてかうをわたってゆけば まんりんのくゎうえふ、がんせいおおし 呉頭…

新美南吉「てぶくろを買いに」

「ほんとうににんげんは、いいものかしら。ほんとうににんげんは、いいものかしら」

宮沢賢治「やまなし」

「クラムボンはわらったよ」 「クラムボンはかぷかぷわらったよ」 「クラムボンははねてわらったよ」 「クラムボンはかぷかぷわらったよ」