2009-02-15から1日間の記事一覧

嵯峨信之「*」(全)

歩いても歩いても 行きさきが分らない 永遠と一日とのあいだを行つたり来たりして いるのだろう 雨になつた そのときぼくにははじめてわかつたのだ 死んだあとの静かな土地には 地名が消えていることを

嵯峨信之「ヒロシマ神話」(全)

失われた時の頂きにかけのぼつて 何を見ようというのか 一瞬に透明な気体になつて消えた数百人の人 間が空中を歩いている (死はぼくたちに来なかつた) (一気に死を飛び越えて魂になつた) (われわれにもういちど人間のほんとう の死を与えよ) そのなか…