2009-02-19から1日間の記事一覧

三富朽葉「のぞみ」(全)

私は雑踏を追ひ求めて歩く、 人人に随つて行きたい、 明るい眺めに眩惑されてゐたい、 のぞみは何処にあるのであらう、 群集の一人となりたい、 皆と同じく魂を支配したい、 荒い渇きに嘔(むか)ついて、 私は雑踏を追ひ求めて歩く。

百田宗治「青空と宿命」(全)

一人の父親が はじめて子供を野原へ連れて行つた。 青く晴れた空とあたらしい芝生のなかで、 子供はゴム毬のやうに軽く弾んだが、 遠い樫の木の根方に歩み寄つて行くその後(うしろ) 姿を見て、 父親はそつくり幼(ちいさ)い自分がそこを歩いて行く やうな気が…