2010-09-13から1日間の記事一覧

「沈黙博物館」小川洋子

カーテンに映る窓の色は、刻々と変わっていった。闇が次第に薄れ、群青色が混じり、やがてそれも縁(ふち)から溶け出していった。風も雪も止んでいた。 一段と長く喉が鳴った。目蓋(まぶた)の下で眼球が微(かす)かに動き、唇が震え、老婆は最後の息を吐き出し…