2010-09-21から1日間の記事一覧

「紫苑物語」石川淳

月あきらかな夜、空には光がみち、谷は闇にとざされるころ、その境の崖のはなに、声がきこえた。なにをいうとも知れず、はじめはかすかな声であったが、木魂(こだま)がそれに応え、あちこちに呼びかわすにつれて、声は大きく、はてしなくひろがって行き、…