2011-01-19から1日間の記事一覧

須賀敦子『ミラノ 霧の風景』

船というものは、かたい道路ではなくて、うねうねとうねる水のうえをゆらゆらと揺れながら渡っていく。当然のことなのだが、この体験は衝撃的だった。とても、直線で何メートルというような基準には合致しない進行方法なのである。波まかせ、という言葉を思…

須賀敦子『ミラノ 霧の風景』

乾燥した東京の冬には一年に一度あるかないかだけれど、ほんとうにまれに霧が出ることがある。夜、仕事を終えて外に出たときに、霧がかかっていると、あ、この匂いは知ってる、と思う。十年以上暮らしたミラノの風物でなにがいちばんなつかしいかと聞かれた…