2011-04-19から1日間の記事一覧

開高健「故郷喪失者の故郷」

私の右手は私の左手がすることを、四十五年同棲しているはずなのに、やっぱり不知不識(しらずしらず)のままでいるが、それでも、手を使えば、おびただしいものが、こめられる。手は故郷である。

開高健「国亡びてわが園を耕やす」

〝事実〟と呼ばれるものにはフィクションで書いたほうが本質が明瞭にあらわれると感じられるものと、ノン・フィクションのほうがいいと感じられるものと、二種類あるような気がする。

開高健「十年ののち影もなく」

プラトンは同情はつねに何がしかの軽視が含まれていることを賢く指摘したが、おなじように苦悩にも甘美な偽善が含まれやすいものであるということを痛感させられた。