2011-04-26から1日間の記事一覧

高橋源一郎『文学じゃないかもしれない症候群』

ぼくたちは、その「敵」のことを「他者」ということばで表現している。そして、その敵に寄せる思いを、「他者への想像力」と呼んでいる。おのれの「正義」しか主張できぬ不遜なもの書きの唯一のモラルは「他者への想像力」である。だが、そのいいかたはすで…

高橋源一郎『文学じゃないかもしれない症候群』

では、なにも書かねばいいのか。それでは、もの書かぬ人を拒んだことになる。では、書けばどうなるのか。それでは、もの書く人がもの書かぬ人に対して作家個人の「正義」を押しつけたことになる。どちらを選んでも、救いはないのか。いや、ひとつだけあるの…

高橋源一郎『文学じゃないかもしれない症候群』

ものを書くということは、きれいごとをいうということである。あったかもしれないしなかったかもしれないようなことを、あったと強弁することである。自分はこんなにいいやつである、もの知りであると喧伝することである。いや、もっと正確にいうなら、自分…

高橋源一郎『文学じゃないかもしれない症候群』

もの書く人はそれだけで不正義である――作家太宰治のモラルはこのことにつきている。

高橋源一郎『文学じゃないかもしれない症候群』

この「威張るな!」のひとことには、太宰治という作家が文学に要求していたモラルのすべてが凝縮している。