2011-07-14から1日間の記事一覧
世のなかがすべて物語であるのは、むしろ、人間が自分自身にだまっていることのできない存在だからなのだ。自分が何者であるかをつねに自分自身に語りきかせながら生きてゆくほかない存在だからである。このことこそ、世のなかがすべて物語であることの根本…
もともと人間とは何者かに見られ、所有され、凌辱されるほかない存在である。誰にも見られず所有されず凌辱されないとしても、自分自身が見、所有し、凌辱するのだ。人間はただ、自分に対する自分自身の関係を他者に転嫁するだけである。
人が鏡の前に立つのは自分が自分だからではない。自分がどのような存在であるかを知らないからだ。自分が一個の他者であり謎であるからなのだ。
自意識の危険な遊戯のなかで他者の位置を占めるのは自分自身にほかならない。自己こそがじつは最大の他者なのだ。
自意識とは現在ある自分から自分がかすかにずれることである。
批評とはおそらく、自己というこのひとつのシステムの別名にほかならない。誰が語っているのでもない。まさにそこで現象しているものが私なのだ。