2012-11-30から1日間の記事一覧

E・H・カー『歴史とは何か』(清水幾太郎 訳)

事実というのは決して魚屋の店先にある魚のようなものではありません。むしろ、事実は、広大な、時には近よることも出来ぬ海の中を泳ぎ廻っている魚のようなもので、歴史家が何を捕えるかは、偶然にもよりますけれども、多くは彼が海のどの辺で釣りをするか…

クロソウスキー『歓待の掟』(若林真・永井旦 訳)

いまぼくは、ルクレティアの狂乱した表情を、細部にわたって述べてみよう。彼女の手は、強引に接吻しようとするタルクイニウスの口を避けるように見せかけながら、明らかに手のひらを彼に与えている。また下腹部におかれているもういっぽうの手は、宝物への…