2012-12-19から1日間の記事一覧

ホメロス『イリアス』(松平千秋 訳)

さて駿足のアキレウスが、ヘクトルを休みなく激しく追い立てるさまは、山の中で犬が仔鹿を追うよう、その巣から狩り出し山間(やまあい)の低地を追ってゆく、灌木の茂みにかがんで身を潜めても、嗅ぎ出してはどこまでも追い、遂には捕える――そのようにヘクト…

デフォー『ロビンソン・クルーソー』(平井正穂 訳)

ある日のことであった。正午ごろ、舟のほうへゆこうとしていた私は海岸に人間の裸の足跡をみつけてまったく愕然とした。砂の上に紛れもない足跡が一つはっきりと残されているではないか。わたしは棒立ちになったままたちすくんだ。まさしく青天のへきれきで…